2016年名古屋場所14日目。
明日は千秋楽というところまで来て、遠藤は、不調ながらも3勝を手にしています。序盤の九連敗を見る限り、もしかしたら今場所はこのまま全敗もあり得るのではと思っていたので、大健闘だと思います。
遠藤に対する気持ちの変化
遠藤が左膝に大怪我を負ってから一年四ヶ月。
その間、遠藤は一度も「全休」ということなく、場所に出続けてきました。
そんな遠藤を見てきて、私はずっと、「どうしてちゃんと休んで、膝を治しきるということをしないのだろう。できれば、全休して番付を落とすことになっても、しっかり膝を治してほしい」と心の隅で思ってきました。
遠藤の人生だから遠藤に任せよう。遠藤にとっては、遠藤の決断に従うのが一番間違いない。そう自分に言い聞かせながらも、遠藤の負け相撲を見るたびに、「膝を治してくれたらなあ」という思いがどうしても湧いてしまっていました。
偉い
しかし、今場所、遠藤の頑張りを静かに見守っているうちに、ふと気づいたことがありました。
遠藤って、負けても負けても、土俵に上がり続けている。不利だし、勝てる見込みも高くないとわかっているのに、挑み続けている。
負ける姿を見せることを恥ずかしがっていないんだ。変に格好つけて、「勝てるようになるまで引っ込んでる」というのではなくて、自分が相撲をやりたい、その情熱のままに、今の遠藤の精一杯を見せてくれているんだ。
それって偉いな。
怪我をして、治療のため引っ込んで、復帰を信じて待っていたのにそのまま引退してしまった力士が過去にいました。そのとき、思ったものです。どんな無様な姿でも良いから、最後に土俵に上がって相撲を見せてほしかったと。本当にダメなんだねって、私も納得したかったと。
遠藤は、「攻め」の姿勢で相撲に臨んでいるんだな。力士でいられる時間は短い。その中を、守りに入るのではなく、徹底的に「攻め」の姿勢で貫こうとしているんだな。
守りに入られすぎて、「膝が治りきらずまともな相撲が取れないため引退します」なんて言われるよりは、攻めに攻めて、膝が治りきっていなくてもやれるだけやってみるという姿を見せてもらえる方が、ファンとしてはありがたいし納得できるな。
攻めの遠藤。完全燃焼しきるつもりなんだな。
そう思うと、遠藤が、雄々しく、勇ましく見えました。
さらなる気づき
そういう「攻めていて偉いな」という思いで遠藤の相撲を見ていたら、もう一つ気づいたことがありました。
(画像出典:2016年7月22日放送 NHK総合1 大相撲名古屋場所13日目)
↑13日目、佐田の富士戦。この取り組みで遠藤は勝利を収めますが、特徴的だったのは低い姿勢。
相手の胸に頭をつけるような前傾姿勢を取り続け、それが勝利につながりました。
遠藤は、膝と足首を傷めているため、土俵際での踏ん張りがききません。
だから、体を起こされて土俵際まで追い込まれたりすると不利になってしまいます。
それを防ぐための前傾姿勢……。
そう思ったときに気づいたのです。遠藤は、「怪我が治っていない状態のまま勝つ方法」を模索していると。
膝を治してから勝とうとするのではなく、膝が痛い状態でもいかに勝つか。
怪我した状態を前提として、それでもなお勝てる方法を身に付けようとしているのでは?
怪我したまま勝つ
(画像出典:2016年7月23日放送 NHK総合1 大相撲名古屋場所14日目)
↑今日(14日目)の豊響戦。立ち合い、やはりかなり低い姿勢です。
(画像出典:2016年7月23日放送 NHK総合1 大相撲名古屋場所14日目)
↑土俵際も、なんとかぎりぎりの前傾姿勢でこらえることに成功。
(画像出典:2016年7月23日放送 NHK総合1 大相撲名古屋場所14日目)
↑そして、自分の体重を相手に預けるようにして、「寄り倒し」で勝利。
なるほど……。
私は一人頷きました。
力士に怪我はつきもの。「怪我した状態では勝てない」と言って引っ込んでばかりいては、それこそ、相撲が取れなくなってしまいます。
万全ではないときの相撲の取り方を知っている方が良い。だから遠藤は、「膝に怪我をしていてもこうすれば勝てる」という方法論を探り、身に付けようとしているのかなと思いました。
ファンとして、「その怪我が目も当てられないくらい悪化したらどうするんだ」という心配心が消えたわけではありませんが、今場所、遠藤は、怪我が悪化しそうな体勢になったときにはこらえず土俵を降りていますし、悪化しないよう、本人も気をつけているのだと思います。
頑張れ
不利な状況下でも諦めずに真っ向勝負で挑み続ける遠藤はとても遠藤らしくて良いです。
心の強さが際立つ力士、遠藤を、これからも応援していきます!!
簡単にはうまくいかないところに、ドラマがあっていいよね。頑張れ遠藤!!