2021年11月九州場所。
(画像出典:2021年11月28日放送 NHK総合1 大相撲九州場所 千秋楽)↑今場所で横綱二場所目となった照ノ富士の横綱土俵入りをそういえばまだちゃんと見ていなかったと思い、録画してあったものを見ました。
堂々とした不知火型の土俵入りで、所作も、ゆったりと力強い中にキレがあり、見ていて快いものでした。
あんな、ズタボロの状態で序二段まで転落したのに、本当によくここまで戻ってきたものです。
横綱は最初から横綱ではない
それにしても、照ノ富士が横綱をつけて土俵に上がっている姿を見ると、しみじみと、横綱って、元々は平幕の力士だったんだなあと思わされます。
横綱は最初から横綱だったのではない。
そんなことは当たり前で、知識としては当然わかっているのですが、私が大相撲を熱心に見るようになった2014年以降、照ノ富士の前に横綱だった(期間がある)のは、白鵬、日馬富士、鶴竜、稀勢の里の四名のみ。
この四名とも、私が見始めたときはすでに横綱だったか、少なくとも大関で、平幕時代を見たことがある力士は一人もいないのです。
ですから横綱というと、なんとなく平幕とは別の存在で、最初から強い力士として存在していたような感覚を持っていたのですが、照ノ富士が横綱になって初めて、横綱とは元々番付が低い力士が勝ち上がってなるものだという実感を持つことができました。
照ノ富士は、私にとって、平幕時代の活躍をよく知っている初めての横綱です。
考えてみると、大相撲ファンになって、平幕時代から知っている力士が横綱になるのを目撃するのは、わりと稀少なことなのかもしれませんね。私の場合、七年も大相撲を見てきて、そういう力士がようやく一人現れたのですから。
照ノ富士の相撲
(画像出典:2021年11月28日放送 NHK総合1 大相撲九州場所 千秋楽 画像内文字は筆者)↑そして、今場所の照ノ富士の相撲をすべて見返してみたのですが、どの取り組みも文句がつけられないですね。
立ち合いの変化や変な奇策、張り差し、肘を顔に当てに行くようなかち上げなど、横綱らしからぬ余裕のない相撲ではなく、堂々と強い相撲です。
応援していた力士が敗れても、これで負けたなら仕方ないな、確かに照ノ富士が強かったと思わせられる。
照ノ富士は、横綱になる前はもっと「はたき込み」などを多用していた印象があるのですが、横綱になってからはそういうのをなるべく避けようという思いがあるのか、少なくとも今場所ははたき込みは見られなかったし、相撲に、以前よりも落ち着きと風格が出ている気がします。
照ノ富士の、横綱としての志
今まで、なかなか、私が思い描く理想の「横綱相撲」を見せてくれる横綱が出てこなくて、出てきたと思ったらすぐ引退してしまうし(稀勢の里)、残念だったのですが、照ノ富士は今のところ、本当に強い横綱相撲というものを実践してくれているように思います。
そうして、照ノ富士に対する評価が自分の中で上がってきたタイミングで、照ノ富士の横綱としての志を聞く機会を得ました。↓
(画像出典:2021年12月29日放送 NHK総合1 大相撲この一年「綱の誇り 新時代へ」)結果を残すだけではなく見本にならなければいけない
結果を残しているから横綱ではなく、みんなが横綱だって見てくれるから横綱
ですって!!
へえ~~、照ノ富士は、「見本にならなければいけない」と思っているんだ。そうだよ、その通りだよ、横綱の相撲を他の力士が全員真似ても大相撲の世界が壊れないような、そんな相撲を取ってほしいんだよ。
素晴らしい志じゃん!!
結果を残せばどんな内容でも(皆が横綱と見てくれないような相撲でも)良いってもんじゃないこともわかっているんだ。
う~~~ん、偉い!
期待
大相撲とは、明文化されていないルールに支えられた競技であり、「これはダメ」とはっきり書かれていないけれどそれを暗黙の了解で皆が守ってきたからこそその魅力が維持されてきたと思っています。
ですから、はっきりダメと規則化されていないからと言って好き勝手にする力士が現れると、やむを得ずそれを禁止する取り決めを作らなければならなくなったりして、大相撲の
特に、番付の頂点に立つ横綱にそういう振る舞いをされると、上の人がやってるから自分もやっていいんだと皆が思って大相撲が滅茶苦茶になっていきそうで、ヒヤヒヤしていました。
けれど、照ノ富士が、皆が認めてくれるような横綱として在ろうと努力しているのを知り、感心したし、安心しました。
今後、様々な事情で思うような相撲が取れなくなってきたときに、照ノ富士がどのような横綱であろうとするのか。
その理念を保ち続けるのは容易ではないとは思いますが、期待を持って注目していきたいと思います。
(そして、照ノ富士に続く横綱が誕生することにも期待!)